9月は国内学会シーズンです。私も共同研究のまとめやらでバタバタする中、いくつかの学会に参加してきました。事情があって発表を取りやめた応用心理学会は置いといて、発表した3つの学会について簡単にレポートします。
○電気学会産業応用部門大会
私はお世話になっている先生のお誘いで電気学会の会員になっています。昨年に引き続き、電気学会産業応用部門大会に参加・発表してきました。今年は沖縄での開催です。
なんで電気学会?と思われると思いますが、電気学会に高品質人間活動支援技術協同研究委員会と言うのがあって、そこでユーザビリティやHCI、あるいはサービス工学といったことを扱っていて、そのオーガナイズドセッションに発表しています。とはいえ、文系の私はやっぱり異色。。。
発表内容は、JST・問題解決型サービス科学研究開発プログラムに昨年度企画調査として採択された研究(リーダーは東大淺間教授)の一部です。
タイトルは、「サービス科学研究のためのユーザモデリングアプローチ」です。フィールドワークをやって、M-GTAでモデリングをやって、そこから定量調査を実施し、数理モデルなりを構築すると言う方法論です。最近、M-GTAをいろいろと活用してみているんですが、数理モデルまでたどりつくにはやはりもう少し考えないといけません。社会学的技法を工学につなぐ部分は、まだまだ面白いことが多いように思います。
ところで、琉球大までタクシーにのったんですが、そのタクシーのおじちゃんが面白い。手品をやってくれたり、ペーパーナプキンで、こんなもんを作ってくれました。バレリーナ。
発表後は、電機大の鈴木先生とその学生、摂南大の横田先生で沖縄をチラっと観光して帰宅。前回沖縄に来たのは、10年ほど前。アメリカ同時多発テロ後で、沖縄の観光がさっぱりになってしまった時でした。それと比較すると、すごくたくさんの観光客、特に若い人が多くて、心なしか(経済活動という面で)ほっとした気がしました。
○人間工学会アーゴデザイン部会
翌日は、日本人間工学会アーゴデザイン部会コンセプト事例発表会にも発表しました。ここ数年、毎年発表しています。昨年までは、学生2グループ程を必ず発表させていましたが、今年は研究室の学生がいなかったので、私だけ発表。
発表は、「長期的なユーザ体験の概念モデル化の試み」という、これまでの成果を図にしましたという話。お恥ずかしい。。。
アーゴ部会のすごいところは、学生の発表を広く受け入れ、優しく真剣に指導くださるところ。他の学会にはない楽しい雰囲気にあふれています。デザイン系では、千葉大が講義の演習の成果を発表していました。
千葉大は、「未来のショッピング(だったかな?)」で、選抜された方が発表。富士通デザインの上田さんが講師を務められた内容です。安藤研の学生を誰も連れてこなかったことを後悔。。。
首都大の西内先生の研究室も、意欲的な研究発表がいろいろありました。このベイジアンネットワークを使ったモデル化は、実は僕も長期的ユーザビリティの研究で試行錯誤中のものでした。彼の発表は、まだお試し的な結果ですが、今後が楽しみです。
昨年まで在籍していた産技大からは、私の取り組みを引き継いでくれた“UX部”というサークルが、2件発表していました。通学をテーマにエスノグラフィックアプローチで、提案しているものです。上の提案は、「うーん」と言う気もするが、下の提案は面白そう。
○ヒューマンインタフェースシンポジウム
ヒューマンインタフェース学会は、私の基幹学会。毎年開催されるヒューマンインタフェースシンポジウムでは、必ず発表するようにしています。今年は東北大学での開催予定だったのですが、3月の震災で開催が危ぶまれていました。しかし、関係者の方々のご尽力もあって、会場を仙台国際センターに移して開催の運びとなりました。
私の発表は、放送大学の黒須先生とトヨタIT開発センターの綾塚さんとの連名で、「デジタルネイティブ世代の生活価値観とソーシャルメディア」というものです。昨年度実施した共同研究の成果のごく一部です。内容は、フィールド調査を実施してM-GTAでモデリングしました、というもの。ここ数年同じアプローチばかりでそろそろ抜け出さないといけませんが、、、
ヒューマンインタフェース学会のいい点は、対話(ポスター)発表にあります。新しいインタフェースのプロトタイプや面白い研究がたくさん発表されます。ですがここ数年は、低迷傾向にありました。ところが、今年の仙台大会は、最盛期と同様の面白く、ワクワクする研究にあふれていました。
面白かったのを一つ紹介。
これは、「IllusionHole におけるマルチタッチインタフェースに関する一検討」という発表なのですが、テーブルトップに穴があいていて、中にディスプレイがあります。
写真ではどうしようもないんですが、実はこのメガネにつけられたマーカーで、穴を覗き込んでいる人だけにスペースシャトルが立体で表示されているように見えます。これ、実は複数人で見てもちゃんと目の前にスペースシャトルが浮かび上がっているように見えると言うもの。見てみるとすごい!
でもこれ、何がすごいって、この穴の設計が絶妙なんですね。他の人と干渉しないところに穴があいている(と、いくら言葉でいっても伝わらないので、先のリンク先をご参照)。
HCD関係者もたくさん発表されていましたね。
こちらはフォトボーディングの発表をされているECナビ榎本さん。聞いているのも、HCDのコアな人。。。
ペーパーホワイトボードプロトタイピングの白澤さん。実演販売の様相。
こちらは、HCDプロセスを企業に導入する効果をKA法で分析した結果を発表する佐々木さん。議論されている後ろ姿の方も、HCDのコアな方。。。
今年の9月の国内学会シーズンも、ひと段落です。今年の残りの発表予定等は以下の通りです。
- 11月30日 ヒューマンインタフェース学会 インタラクションのデザインと評価専門研究委員会 研究会
- 12月8日 人間中心設計推進機構2011 研究発表会
- 12月10 人間工学会関東支部大会
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