2014年度になってから、なかなかブログを書けないまま、夏休みになってしまいました。これからはがんばって情報発信していきます。
さて、本日は、私安藤の個人的な意見を書かせていただきます。
【アイス・バケツ・チャレンジ】
皆さんは、ここ数週間、世界中で話題になっている“アイス・バケツ・チャレンジ”をご存知でしょうか。ALS(筋萎縮性側索硬化症)という、原因も治療法もわかっていない難病の認知度を広めるために、米国で始まった活動です。Wikipediaの情報を参考に、整理すると
- 「アイス・バケツ・チャレンジ」を受けることを宣言
- バケツに入った氷水を頭からかぶる
- 次にこのチャレンジを受けてもらいたい人物を2人から3人程度指名する
- この様子を撮影した動画をFacebookやTwitterなどの交流サイトで公開してチャレンジ完了
- 指名された人物は同様に氷水をかぶるか、または100ドルをALS協会に寄付するか、あるいはその両方を行うかのいずれかを24時間以内に選択する
というものです。
実は一昨日(8月23日)、若き福祉ベンチャーの星、株式会社abaの宇井 吉美さんからアイス・バケツ・チャレンジのご指名をいただきました。
ALSのプロモーションということで、一度はお引き受けしたのですが、いろいろ熟考の末、寄付をさせていただくこととしましたので、ご報告します。寄付先は、日本ALS協会です。
私が、ALSという病気を知ったのは、仕事を始めたばかりの1997~1998年頃、障がい者の情報アクセシビリティに関する仕事においてでした。アクセシビリティの仕事は、私にとって驚きと自分自身への無知への憤りと、そして“何かできる”という想いが交錯する、非常に強烈なインパクトのあるできごとでした。
ユーディットの関根さんや、当時横浜リハの畠山先生(現早稲田大)など、障がい者支援の現場の方々のお話をお伺いしながら、少しずつ障がい者のことを勉強していきました。その中で、ALSという病気の患者さんにお会いしました。原因も治療法も不明で、しかも進行性という病気。認知能力も感覚もそのままに、衰える身体機能と向き合う患者さんのことを考えると、それはもう想像を絶することでした。しかし、そうした患者さんも、残存機能を使ってスイッチを装着し、意思伝達装置や、状態によってはパソコンを使うことができることを知りました。そこで感じた一種の希望は、その後もアクセシビリティの仕事をするきっかけにもなりました。
しかし、それ以上に強く感じたことがあります。それは、進行する病気の状態に応じて、すこしでも楽にパソコンを操作できるようにと、日々利用環境のメンテナンスや改良・改造して支えているパソコンボランティアの方々やリハビリテーション工学の専門家の皆さんの努力と熱意です。障がいを持ち、在宅でありながらも社会と関われるインターネットは、障がい当事者にとって、その重要性ははかりしれません。それを支える人たちの努力に、心から尊敬の念を抱いたのを忘れません。特に、リハビリテーション工学協会の大会に参加した時の発表の数々は、驚くほかなかったのを鮮明に覚えています。
私の会社(私が参加し1998年に設立したコンサルティング会社)は、障がい者のパソコン利用環境を、さらに改善すべく、独自開発のソフトウェアとして「障がい者の利用環境を想定した日本語予測入力ソフト」を2001年に開発しました。その名もPete (ピート)と言います。このソフトウェアの根幹は、当時SONY CSLにおられた増井先生(現慶応大)のPOBoxです。当時社長だった、内田さんが増井先生にかけ合い、技術の使用を快諾いただき、ソフトウェアとしてリリースすることができました。
現在も、このソフトウェアはバージョンアップを重ねており、シェアウェアとして公開し、多くの方々に使用していただいております。
(Peteのページへ)
このソフトウェアを開発するに当たり、ALSだけでなく同様に進行性の難病である筋ジストロフィーの方、脊髄損傷による肢体不自由の方など、様々な状況の方のご自宅を訪問し、日々の暮らしの中でどのようにパソコンを使われているかや、その思いに触れてきました。私はその後、Webアクセシビリティの規格作りと普及、JISやISOの委員など、微力ながらも関わり続けて来ています。
氷水を被ることを通して、“ALS”という病名を知ってもらい、寄付があつまることは、すごく良いことだと思います。
ただ、私はUXの研究者であり、これまでも障がい者のアクセシビリティに関わってきた者として、ただただ、氷水を被るだけでは、どうにも自分の想いを表現できないと感じました。
やはり、ユーザーを観ること、知ることは、なにより重要だと思います。また、障がい者のことに関して言えば、家族はもちろん支えておられる周りの方々にも想いをいたすことは、重要なことだと思います。
氷水をかぶることで、この活動の推進力となりうる著名人の方と私は、とうてい違うわけですし、真正直に自分の想いを記述することが、きっとこの活動に沿うものではないかと判断し、このようにいたしました。
長文ではありますが、ご報告まで。
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